東京高等裁判所 平成2年(ネ)3691号 判決 1991年5月09日
控訴人
甲野花子
被控訴人
東京都
代表者知事
鈴木俊一
指定代理人
中村次良
同
下野昭雄
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
第一当事者双方の申立て
一 控訴人
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は、控訴人に対し、金二〇〇万円及びうち金一〇〇万円に対する昭和六〇年一二月一五日から、うち金一〇〇万円に対する平成二年六月二八日から各完済まで年五分の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。
二 被控訴人
主文同旨(ただし、控訴人が原審において請求を拡張した金一〇〇万円及びこれに対する平成二年六月二八日から完済まで年五分の割合による金員の支払いを求める請求部分については、拡張前の請求部分とその請求の基礎を異にし、また、それを追加することは、著しく訴訟手続を遅滞させるものであるから、右の追加的訴えの変更は許されないものであり、その訴えは却下されるべきであるが、右主張が認められないときは、控訴棄却の判決を求める趣旨である。)
第二当事者双方の主張
当事者双方の事実上の主張は、次のとおり付加訂正するほか、原判決の事実摘示(第二事案の概要)と同一であるから、これを引用する。
(1) 原判決三枚目裏一〇行目の「ものであったか、」(本誌五七二号<以下同じ>55頁3段18行目)の次に「(5) 昭和六〇年一一月の本件訴え提起後平成二年六月二六日まで、被控訴人が違法な取扱いをした結果、控訴人が昇進の道を閉ざされ、専門分野の研究が事実上できなかったか、(6) 手続上の争点として、右(5)に関する請求の追加につき、訴状記載の請求と請求の基礎を異にするか、また、著しく訴訟手続を遅滞させるか、」を加える。
(2) 同六枚目表九行目の「への配置換えを行い」(56頁2段20行目)を「での職務従事を命じ」と改める。
(3) 同八枚目表一行目の「マイコン室への」(56頁4段23行目)を「マイコン室での職務従事を命じたことによる同室への」と改める。
(4) 同九枚目表九行目の「生活科学部長」(57頁2段16行目)を「前記研究科長」と、同九行目から一〇行目にかけての「マイコン室への配置替え命令を行った」(57頁2段16~17行目)を「マイコン室での職務に従事するよう命じた」と改める。
第三証拠関係
原審及び当審における証拠関係は、本件記録中の証拠関係目録記載のとおりであるから、これを引用する(略)。
理由
一 当裁判所も控訴人の本訴請求は理由がないからこれを棄却すべきものと判断する。その理由は、次のとおり付加訂正するほか、原判決の理由説示(第三 争点に対する判断)と同一であるから、これを引用する。
(1) 原判決一三枚目裏(58頁4段6~14行目)及び同一四枚目表(59頁1段6行目)にある「試験官」をすべて「試験管」と改める。
(2) 同一六枚目裏九行目の「中止したり」(59頁4段9行目)を「中止させたり」と改める。
(3) 同三〇枚目表一〇行目(64頁2段2行目)の次に行を改め、次のとおり加える。
「四 昭和六〇年一一月の本件訴え提起後平成二年六月二六日まで控訴人が昇進の道を閉ざされ、専門分野の研究が事実上できなかったとの主張について
1 原審における控訴人本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、控訴人は、その主張の期間内には、特別昇給を受けていないこと及び研究テーマを与えられず、研究費の配分も受けていないことが認められる。
2 右の点に関する控訴人の請求は、控訴人の職務につき、被控訴人から違法な取扱いを受けたことによって控訴人が被った精神的損害に対する慰謝料の請求であって、控訴人の訴状記載の請求とは、控訴人の職務につき同一の職場において生じたとされる事実を原因とする点において共通し、その法律上の性質も同じであるから、両者は、請求の基礎を同じくするものであり、かつ、原審における弁論の経過に照らし、右新請求の追加が著しく訴訟手続を遅滞させるものとはいえないから、右新請求につき訴えを却下すべきであるとの被控訴人の主張は失当である。
3 そして、控訴人が特別昇給を受けていないことが被控訴人の違法な取扱いによるものであることを窺わせる事情は本件証拠上これを認めることができず、また、控訴人主張の研究に関しても、控訴人本人尋問の結果(原審)によれば、控訴人自身から研究計画を担当上司に提出してその承認を受けようとしていないことが窺われるうえに、被控訴人がことさら不当な取扱いをしたものというべき事情を認めるに足りる証拠は見当らない。
4 よって、被控訴人の違法な取扱いによって、控訴人が昇進の道を閉ざされ、又は、専門分野の研究ができなかったとの控訴人の主張は理由がない。」
(4) 同三〇枚目表末行の項番号「五」(64頁2段3行目)を「六」と改め、同裏二行目の「認められないから」(64頁2段6行目)を「認められず、また、控訴人が違法に昇進の道を閉ざされ、又は専門分野の研究ができなかったとの控訴人の主張も肯認することができないから」と改める。
二 よって、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却し、控訴費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 橘勝治 裁判官 小川克介 裁判官 南敏文)